【静岡】ポプラ
「魅力」
街は変わってしまった。
空蝉のようにはかない、恋のせつなさは思い知らされたのに
またこんな便りにすがりたいわが心。
冷たい風が両替町を吹き抜けて、誰かが捨てたボロ傘がじたばたとはためく。
あの階段を昇れば、きっとあの頃に戻れる。
だけど今はもう
濡れて破れた新聞紙が、別のものに見えた。
叩き潰された段ボールが生き物に見えた。
変わらない場所がこの街にはあって、
もう少しでそこに踏み出そうとしている。
あそこで食べたエッグサンド、今も変わってないのかな。
あいつはよく フルーツサンドを食べてたな。
テーブルを挟んで座ってた、あいつの顔はもう思い出せないけど。
〜フィクション劇場「魅力」〜 おわり。
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