【桐生】ルポ
「月夜の探検者」
暗闇の中を歩いている。
行けども行けども明けない夜が在って目指す場所が分からなくなる夜だった。
大通りを一つ這入った小道の角でぽうっと明かりが灯っていて
ほっとして一寸休むことにした。
夜の遅い時間であったので店内は閑としていたが
いつもは地元の方々でにぎわうようだ。
明るく綺麗な店内で雑誌を読みながら暫く待つ。
間もなく運ばれてきた温かい料理をいただいた。
歩き疲れた冷えた体に生命の灯りがぽうっとともった感じがした。
確かに何気ない場所にある何気ない喫茶店だったかもしれない。
だけどその何気なさに救われて感じる幸福もあるんです。
何気ない有難さを人は幸福と呼んで――――。
歩き出す。暗闇を。
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