【藤枝】苑


藤枝に残る伝説の話です。


むかし、藤枝にある岡出山の南側にマコモ池という大きな池がありました。
この池には大蛇が住んでいました。
あるときこの大蛇は長者の娘で賀姫という美しい娘に恋をしてしまいました。
大蛇は美少年に化けて毎日姫に会いにいきました。
そしてついにある日、大蛇は賀姫をだまして池の中に引き込んでしまいました。


一人娘を奪われた長者は大変怒り、焼いた石やどろどろに溶かした鉄を池に流し込んで大蛇を退治しました。


かたき討ちを果たした長者は自分の屋敷をお寺にして賀姫の冥福を祈り残りの人生を静かに暮らしました。

この話に出てくる岡出山は市役所になり、マコモ池は少し埋められて青池となりました。
長者が住んでいて寺になったのが現在の長楽寺だそうです。



現在の姿を見てしまうと何とも味気ないですが
この話にはおもしろいところがあります。


まず池に大蛇が住んでいるという設定です。
古来より蛇や蛟(みずち)は水神とされてきました。
日本人にとって最も身近だった川の流れは大雨により時に凶暴に
村々を襲ったことが推測できます。その水の奔流のイメージから蛇がでてきたのではないでしょうか。


次に蛇を退治したやり方に目を向けてみましょう。
池にもぐってモリで刺すなり池の水を抜くなり他にも方法があっただろうに
この話では焼いた石と溶かした鉄で退治します。

これは古来の製鉄集団がこの地を征服しに来た出来事の比喩であると推察されます。




今回の話はそのままでも昔話として楽しめますが
伝説の裏にあった(かもしれない)出来事を読み解くと
楽しみが二重になって興味深い限りです。








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