【小松】泉
小松は「故郷」を感じさせてくれる街だ。
駅前から遠くまでまっ直ぐのびる商店街。
厳しい日本海側の気候帯に属する街らしく、これは雁木づくりか。
雁木づくりとは雪深い地方に見られる建築様式で、
家屋のひさしがそのまま前方に張り出した形になっているものだ。
張り出したままでは積った雪の重量に耐えられないので
ひさしの先からはまっすぐに地面に向けて心棒が立てられる。
元々「雁木」と言う言葉は、直角に階段状になっているものという意味なので
家屋を横から見ると軒下が90度の囲いになっている様子がよく分かる。
「雁木」の由来をさらにたどると、鳥の雁(がん、かり)が群れで飛行する際に
ほぼ直角の隊列を組むことから直角に切り出した木材を「雁木」と言ったことに行き当たるようです。
雁木づくりの商店街とアーケード商店街はよく似ているので一緒くたにされることが多いが、
ようく見るとかなり相違点があるのが分かる。
雁木づくりはあくまでも一個の建物のひさしの延長であることから、
地面に対して平行であることが多い。
商店街のように家屋が隣り合っている場合だけでなく、
雁木づくりの家屋が田園にぽつんと建っている場合もある。
比べてアーケードは西欧に端を発するもので、
日本では隙間なく密集した商店街があって初めて成立する。
イオンレイクタウンやららぽーとなどのショッピングモールはその進化した姿である。
惹起されたノスタルジアを懐に仕舞って小松の八日町商店街を歩く。
山形の項で触れたがここもやはりかつては「毎月8の付く日」に市場が立ったのだろうか。
そうだとすれば毎月5のつく日はお客様わくわくデー、のイオンとやっていることはあまり変わらない。
パーラー泉さんへお邪魔する。
ここはなかなか見ない建築方法で造られているお店だ。
カウンターに斜めに指す支木もめずらしい。
まだ暑い夏の終わり。
レモンスカッシュがポンカン色に染まる。
液体の色ばかりでなく、店全体がレモン色の優しいカーテンの光りにくるまれているのだ。
素晴らしい喫茶店や、素敵なマスターやママに会うたびに想う。
これから先あと何度この扉をくぐれるかな。
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