【秋田】やちよ

日本の国土のうち66%は山だ。



東京や大阪などの都市にいるとこの感覚が失われていくが
日本はやはり八百万の山森の神が住む国なのだ。今もって。


Googleマップなどの地形図や航空写真で見るとよくわかる。
東北地方の真ん中は出羽山脈が屏風のように連なっているし、
中国地方にある中国山地は今もって山陽地方と山陰地方
(これらの呼び方は適当とは思わないが)を隔てている。

四国だってそうだ、山並みがあるせいで香川から高知へは大回りをしていかなくてはならない。
電車も高速道路も大自然を克服するにはまだ至っていないのだ。
(その山並みが潮風を防いでくれるおかげで愛媛のみかんはおいしいのだが)


大都市にいるから分かることと同じくらい、大都市にいると分らないこと、忘れてしまうことがある。
もう一度言いたい。日本は山の神の国だ。


千代に八千代に、ということで秋田駅前にあるこちらの八千代さんだ。

秋田は東京からはしんかんせん「こまち」で一本で来るか、盛岡でこまちに乗り換えもできる。
青森方面からは特急「つがる」で2時間だ。


秋田は今年はじめてセブンイレブンが出店するなどその地方性ばかりがクロウズ・アップされているが
久保田城跡を擁する千秋公園やさくらの名所など見どころも多いことを忘れてはいけない。


もともとの繁華街は駅西口の「中通り」というエリアだが、
再開発の影響もあり今は繁華街が少し北側に移動している。


若者の聖地・フォーラス(仙台の国分町にもある)や
駅前アゴラ広場の巨大アーケードはなかなか壮観だ。


さてこちらのやちよさんの名物のひとつに「トルコライス」なるものがある。
トルコライスについての説明は次回の長崎か神戸の回にまわすが、
とにかく東北地方で西日本に起源があるトルコライスを出す店はなかなか珍しい。
他のどの料理にも似ていないこの料理、ぜひともご賞味していただきたい。



元々やちよさんはニッカバーとして1947年に開店した。
ウヰスキーを出す(日本式の)バーは1950年代にブームとなり
1960年初頭にその沸点を迎える。
ちょっとお洒落な洋モノの酒で満たしたグラスを傾けながらそれぞれの主義(イズム)を語り、
人生や交友を勉強し幅を広げる場として大人気だったわけだ。


ブームの下降を見越してかやちよさんは'60年代末期にへと衣替えをした。
そうあれはアポロ11号が人類初の月面着陸に成功した年だった。



今では洋食を出す親しみやすい喫茶店として地元の方々の胃袋とキモチを満たす店になっている。
学生時代によく来ていて今でも帰省のたびに店に顔を出す客もいるそうだ。
長年の歴史がなせる業(わざ)だ。



これから短い夏の後、秋田には厳しい冬が訪れる。
やちよさんには秋田駅前の「山の神」としていつまでも頑張ってほしい。






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